- 株式会社スマートアグリカルチャー磐田(SAC iWATA)
- 所在地:静岡県磐田市
- 株主構成:富士通51%、オリックス39%、増田採種場10%
- トマト施設の概要:施設面積約1.2ha。フェンロー型ハウスを採用
- 栽培内容:ロックウールを培地にした水耕栽培で、9月頭に定植し翌年7月に摘芯して収穫を終える周年栽培、ハウス内のトマトの株数は3万株、畝の総延長は6.5キロメートルに及ぶ
ICTをフルに活用したスマート農業を実践
当社はICT(情報通信技術)の活用によって、例えばハウス天窓の開閉や冬場のボイラー燃焼による温度管理、施肥(液肥)や灌水の質・量管理、生育状態の把握など、従来は営農者の勘と人手に頼っていた部分の多くが自動化、省力化されています。当社全体の栽培品目は、生でも食べられるケールなど特徴のある葉もの野菜や、市場性の高いトマト、パプリカなどで、独自の流通網を使って販売しています。将来的には作物の生産・販売だけでなく、蓄積した栽培管理技術や周辺ノウハウをパッケージ化して提供することを目標にしています。
私が担当するトマトハウスの現在の栽培品種は、ピンク系大玉トマトの「富丸ムーチョ」。日本品種と海外品種のハーフで、棚持ちがよく食味も優れているなど両方の良いところを合わせ持っています。栽培にあたり特に気を配っているのは、やはり品質の安定です。大きさが揃ったおいしいトマトを消費者の皆さんにお届けできるよう、日々、スタッフ一丸となって努力しています。
コナジラミ対策が大きな課題に
トマト栽培にはつきものとされる病害虫への対策には、ICT化された農業を営む当社も、他のトマト農家と同様、悩ませられます。特に、黄化葉巻病を媒介するコナジラミの対策には苦労しています。今シーズンも9月の定植直後から、黄化葉巻病に罹患した株が週に何百という単位で出てきました。最初は100、200でしたが、そのうち500、600に。その調子で増えると年内に全体3万株のうちの10%をロスしてしまうという状況でした。農薬を散布する一方、パートさんたちに葉かきをしてもらって全部追い出すなどし、何とか摘芯前の時点で8%程度のロスに落ち着いたという具合です。
コナジラミは一旦発生すると爆発的に増え、かつ一度増えてしまうと防除するのが難しい、とてもやっかいな害虫です。そのため、発生初期にいかに抑え込むかが重要です。具体的には、コナジラミが好む黄色の粘着シートをハウス内外に設置し、週に1度の頻度で定期的にモニタリングをし、どの場所でどの程度発生しているかを随時把握するようにしています。そして状況に応じて、薬剤の種類や、当該箇所だけか全体を消毒するかなど、防除計画を細かく調整しています。
複数の薬剤をローテーションすることでコナジラミに対応
コナジラミは、農薬が効きにくい害虫の代表例です。どの種類のコナジラミが発生しているかにもよりますが、基本的には発生初期に、最大濃度で撒いて防除するという使い方です。そうして最初のうちに防除してしまわないと、ずるずる引きずることになるからです。トランスフォームも、1000倍希釈で10アールあたり300リットルの濃度・用量で使っています。
現在、コナジラミに関して使用している薬剤は15種類程度です。コナジラミを見つけたら、トランスフォームを含め、複数の薬剤を散布します。殺卵効果のある薬剤や、幼虫、成虫に効くものなど、薬剤によって効果が異なります。トランスフォームを撒いた次には気門封鎖剤を使うなど、いくつかを組み合わせたローテーションを組んで撒くと、うまくコナジラミを抑えることができると思います。
トランスフォーム導入の直接のきっかけは、販売店からの紹介でした。まったく新しい系統の薬剤ということで、ローテーションを組んでいる他の薬剤と系統がバッティングすることがないため、それまでの防除履歴を気にせず使うことができますし、抵抗性問題もまだありませんので、即決ですぐ使えるところが魅力でした。初回はある意味、試しに使ったという形ですが、散布後に圃場内を歩いていて、トマトの葉の上に小さな白いものが落ちているのを見つけ、ああ効いているな…と、その効き目を実感。散布の上限回数は年2回ですが、安心して2回目も使うことができました。
薬剤によっては下手をするとコナジラミが増えてしまうこともありますが、トランスフォームは虫の増加を抑え込んでくれます。効き目をABCの3段階にランクすると、トランスフォームはA。よく効く薬剤にあたります。フロアブル剤なので、扱いやすいのも利点です。当社の場合、農薬散布は畝間に敷かれたレールの上を、防除ロボットがシャトルのように行き来して行われます。水和剤は溶かすのに時間がかかったり、ときに噴霧口が詰まりやすかったりしますが、そうした周辺のトラブルが少なく、ロボットの作動を妨げられないのもありがたいところです。
本格的な周年栽培は今期からになりますが、10アールあたり40トン越えという、ベテランの農家さん並みの収量を初シーズンから達成することができたのは、ICT化による栽培管理と病害虫対策をうまく組み合わせ回すことができたからだといえます。全般的にコナジラミは薬が効きにくく、その状態はこれからも続くと思います。今後も新系統の薬剤や、効きのよい薬剤の種類が増えるよう、メーカーさんの開発力に期待しています。
園芸用殺虫剤 トランスフォームフロアブル とは