河川を経由して、水田に侵入するナガエツルノゲイトウの防除のコツを、茨城県の水稲農家さんに伺いました。特定外来生物『ナガエツルノゲイトウ』は、わずか数センチの切断茎からでも再生し、あっという間に繁殖するため、気が付いた時には防除が間に合わなくなることも。この雑草を田んぼで見つけたら、早期防除が広げないためのポイントです。
【プロフィール】
・荒井和浩さん(36歳)
・栽培地域:茨城県稲敷市
・水田面積:約50ha
地元の会社に10年勤め、結婚を機に家業である農業を引き継ぎました。現在、秋田こまち、コシヒカリなど5品種を栽培しています。近隣のリタイアする農家さんの田んぼを預かることで約15haから約50haへと作付規模を拡大させてきました。
水稲栽培の悩みといえば雑草対策です。就農したばかりの頃、イボクサを甘く見てしまい、稲の刈り取りができないほど田んぼで大発生させてしまった経験があります。それ以来、どんなに小さくて可愛い草でも気を抜かず防除するようにしています。
2020年、地域で行われた勉強会でナガエツルノゲイトウという新しい雑草を知りました。田んぼ用の用水を取水している近くの川でナガエツルノゲイトウが繁殖しはじめているので注意が必要だと、農研機構の先生より注意喚起を受けたのです。外来種のナガエツルノゲイトウは、小さな切断茎からでも繁殖するため、まずは水田に侵入させないように用水路からの給水栓の口にネットを被せ、落水時には水尻にザル等を置いて茎の切断片を流出させないことが重要だと教わり、さっそく地域の農家で連携して対策に取り組みました。
2日で枯れはじめる即効性。大きくなる前の防除がポイント
翌年、侵入防止策を打つのが一足遅かったのか、私の水田でもナガエツルノゲイトウの小さな芽が出てしまいました。「特定外来生物」に指定されているナガエツルノゲイトウは、抜き取り・刈り取りによる防除を行う際は、十分に乾燥させ、ビニール袋で厳重に梱包してから廃棄する必要があるなど、大変な手間がかかります。また、繁殖力はイボクサの比ではないということで、とにかくすぐに取り組めてなるべく手間のかからない方法がないかと、懇意にしている農薬販売店に駆け込んで相談したところ、『ウィードコア™1キロ粒剤』を勧められました。初めて聞く名前で本当に効くのか半信半疑でしたが、とりあえず使ってみようと、中干し前にブームタブラーで1回散布しました。
すると、2日後には葉が変色し始め、1週間後には茎が溶けたように無くなってしまいました。あんなに脅威に感じていたナガエツルノゲイトウがみるみる枯れていく様子は、目を疑うほどでした。即効性が実感できるので、散布した水田を見に行くのが毎日楽しみになったくらいです。中干しのタイミングで水田の中を確認したところ、ナガエツルノゲイトウはまったく見当たりませんでした。非常に繁殖力が強く、一度発生したら抑え込むことは困難なので、芽が小さいうちに防除することが肝心だと思います。
河川や沼から水田に流れてこんでくるナガエツルノゲイトウは、一人の農家だけでは対策に限界があります。一番重要なのは、水路の対策を地域全体で徹底的に行い、水田への侵入を防ぐことです。給水栓の口に収穫ネットを被せて流入を防止し、水尻にザル等を置いて茎断片の流出を防止する。このことを、まずは地域の農家と手を携えて行うことが必要だと思います。
※)本剤の使用に当っては、使用量、使用時期、使用方法などを誤らないように注意し、特に初めて使用する場合は病害虫防除所など関係機関の指導を受けてください。
【取材協力】
茨城県稲敷市 荒井和浩さん